「人の生るるや柔弱、その死するや堅強。萬物草木の生ずるや柔脆、その死するや枯槁」 (人が生まれた時は柔らかいが、死ぬと堅く強ばってしまう。万物にあっても、たとえば草木が生え出た時は柔らかであるが、枯れると乾いてかさかさになってしまう。)これは老子の言葉の一節です。
さて、ヒトの心臓は毎日およそ10万回拍動し、1万4千リットルの血液を血管に送り出しています。そして心臓や血管は、酸素、栄養素、ホルモンを全身に供給し、老廃物を運び去ります。心臓から血液が流れていく血管を動脈と言い、その動脈の太いものを弾性型血管と言います。本来は弾力性に富み、柔らかなものです。この柔らかさによって、全身の隅々まで血液が流れていきます。
動脈が動脈硬化により弾力性を失い、動脈が硬く内腔が狭くなり、最後には血の塊により詰まってしまう現象が心臓に起きれば心筋梗塞であり、脳に起きれば脳梗塞となります。足の血管に起きれば閉塞性動脈硬化症、下肢急性動脈閉塞という病になり、ひどい場合は足の切断に至ります。
動脈硬化の程度は、当クリニックでは上肢下肢血圧測定、頸動脈エコー検査、下肢動脈エコー検査などで評価します。異常が見つかればCT、MRIなどをオーダーして診断をします。症状から思い当たる方や動脈硬化が心配な方は、一度、当クリニックにお越しいただき、動脈硬化の程度を調べてみてはいかがでしょうか。
動脈硬化の進行を早めたり悪化させたりする原因としては、偏った食生活(肉類や油脂の過度な摂取)、喫煙、運動不足、ストレスなどがあります。
では、一度出来てしまった動脈硬化は治らないのでしょうか。近年の研究で、完全には治らないまでも、ライフスタイルを変えることで、動脈内に出来た脂肪の塊が小さくなり、安定化するということが分かってきています。
“動脈硬化”が進んでいると思う方は、
●禁煙・・・これは重要です!タバコは血管の内側を傷つけます。
●運動・・・1日30分程度が良いとされています。
●ストレスコントロール・・・趣味を持つことや、よく笑うことなど。
●食事・・・脂肪摂取を少なくし、穀物や果物、野菜などを中心に多く摂るようにお勧めします。
かなり進行してしまった閉塞性動脈硬化症に対しては、当クリニックにて適切な治療を提案させていただきます。
「柔弱なるものは生の徒なり」「柔よく剛を制す」と老子は言います。循環器及び心臓血管外科専門医である私が思うに、「柔らかい血管は健康を制する」といったところではないでしょうか。~しなやかで、柔らかな血管を目指して~
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